AIでできることを
子供たちに伝えていく TAKUYA OTSUKA

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データサイエンスセクション
データサイエンティスト
大塚 拓也

高校時代に聞いた天文学者の講演から宇宙に興味を持ち、大学で物理学を学んだ後、大学院で天文学を専攻し、宇宙の研究を行う。その後、個人事業主として、投資用の分析ソフトを開発・販売し、一定の成果を得る。その経験から、AIや機械学習の利便性を感じ、独学で勉強し、現場での経験を重ねるために株式会社BXD(現バンダイナムコネクサス)に入社する。現在はデータサイエンティストとして、ゲームアプリのダウンロード数予測、売上予測、IP分析など複数のプロジェクトに参画。第一子の出産時には育休も取得。趣味は川釣り。

課外授業をした理由

きっかけを作ってくれたのは、私の妹です。中学の数学教師をしているのですが、顧問をしているパソコン部に遊びに来ないかと声がかかりました。パソコン部ではゲーム制作をしていて、バンダイナムコグループの会社の人が来てくれるだけでも、良い機会になるというのが理由でした。遊びに行くぐらいならとOKしたところ、せっかく来てくれるのなら、中学一年生全体向けに職業紹介をしてもらえないかと、学校の先生方のリクエストもあり、40分一コマの授業を受け持つことになりました。

AIが便利だと言われる昨今、AIができることは何であるのかを理解したうえで、何を勉強していくかを考えたほうが良いと常々思っていました。せっかく勉強したスキルが、AIによる自動化によって無駄になる事だってありますから。その点について話せる良い機会ですし、上司に相談したところ、快く後押ししてくれたのもあり、あとは話した際に、中学生がどのような反応をするのだろうか、という好奇心もあって、この授業を引き受けることにしました。

職業紹介の授業内容

授業当日は、私は中学校からオンラインで授業を行い、中学生は自宅からオンライン参加するというスタイルで行いました。一クラス約35人で、4クラス合同でしたので、約140人の参加者を対象に、私の自己紹介と会社紹介をした後、次の3つの内容で進行しました。
・データサイエンティストとは?
・AIを使ってできること
・どうやってデータを使ってゲームを面白くするか?

当日のオンライン授業風景

まず中学生にとっては初めて聞くであろう「データサイエンティスト」という職種が、ビジネスにデータを活用する仕事であることを説明しました。そのうえで、データ活用の方法として、AI(人工知能)の中でも機械学習を使うんだよ、データを学習させて問題解決のルールを作るんだよ、という順番で紐解いていきました。機械学習の活用例では、「アイスは気温が何℃の時に売れるのか?」という質問も投げかけながら、インタラクティブな授業を心がけました。

ケーススタディのテーマ

授業の最後には、架空のゲームを設定して、ユーザーが飽きてしまう原因をデータ分析で明らかにするケーススタディに取り組んでもらいました。このゲームは、ストーリーモード、育成バトルモード、対プレイヤーモードの3つのモードで遊べる設定です。仮想データの分析の結果、ストーリーモードを遊んでいないユーザーがゲームをやめていることが導き出されます。その結果を受けて「ゲームをどのように変えていったらいいのか」をテーマにディスカッションをしてもらいました。「感動的なアニメーションを入れる」「ボーナスを与える」など、活発にアイデアがチャットに出てきて、こちらの対応が追いつかず、先生方にフォローをしてもらったくらいでした。

授業を開催して感じていること

今回、データサイエンティストという職業を説明してきましたが、中学生とのやり取りで、学んだことも多かったです。特に「ゲームをどのように変えていったらいいのか」について、挙げてくれた施策のほとんどが的を射たもので、中学生の生の声(ユーザーの生の声とも言えます)に触れられたことが非常に勉強になりました。普段、触れている社会人とは違った方と異なるテーマで話すこと、また自分が中学生、高校生の時に、聞きたいと思っていたことを、社会人になった自分から中学生、高校生にぶつけてみて、どのような反応が返ってくるのか、それを見るだけでも大変刺激がありました。

あとは参加者の多くがゲームに触れているようで、ケーススタディの題材が想像しやすかったようでした。ゲームという題材に助けられ、改めてゲームが身近なものになっているというのを肌で感じることができました。ちなみに「アイスは気温が何℃の時に売れるのか?」の質問に、正解した人が一人だけいるんです。誰も答えられない想定で出題したものですから、すごいなあと感心しましたし、子供の可能性を感じた瞬間でもありました。

組織外で自分の専門性を活かすこと

授業の前は、内容が難しくないか、機械学習について理解してくれるかなど、不安の方が大きかったのですが、ケーススタディで投げかけた質問に、たくさんの回答を返してくれました。「授業にしっかり付いてきてくれた」と感じることができ、ほっとしましたし、うれしかったです。今回の授業が中学生でも理解してもらえることが分かり、AIについて伝えていくべきだ、という確信を持つことができました。

授業後、生徒ひとり一人からの授業へのお礼が綴られた冊子をもらいました。「ゲームの話だったのでうれしかったです」「普段やっているゲームの裏側ってこうなっていたんですね」といった感想が書かれていて、楽しんで参加してもらえたようでした。私自身もそのような声を聞き、自分の仕事が様々なユーザーへと繋がっていることを改めて実感しました。今後はパソコン部に訪問してみたいですね。会社や上司も、相談したら「ぜひやってみなよ」と後押ししてくれるので、機会があればぜひ行ってみたいと思っています。

授業に参加した生徒からのお礼が綴られた
冊子を手元にインタビュー
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